Pacific Compensation Insurance Company(PacificComp)は、カリフォルニア州の労働者災害補償保険の新しいリーダー企業です。クレーム、損失、詐欺の積極的な管理を通して損害率の大幅な減少に注力しています。2010年、同社は、ビジネスモデルを直接販売から保険ブローカーの活用へと根本的に転換することを決定しました。これには、主要システムの全面的な見直しが必要であり、またインテグレーションに関連する多くの課題に取り組む必要がありました。そこで同社はAnypoint Platform™を採用し、ポリシー管理や請求管理をはじめとするシステムを統合し、新しいビジネスモデルによる会社の再起動を目指しました。その結果、サービスへの影響を最小限に留めつつ、デリバリまでの期間の短縮、異種環境に対するサポートの向上、インフラのモダナイズを実現したのです。

課題

ビジネスモデルを根本から変える

ますます競争が激化するカリフォルニア州の労働者補償保険市場において、そのニーズに応えるため、PacificCompはビジネスモデルを根本から変えると決めました。

どの企業においても事業成功の鍵はどれだけ市場へのアクセス性があるかによります。PacificCompでも、保険ブローカーと提携し、カリフォルニアの労働者により多くの、そしてより充実した選択肢を戦略的に提供すべき時期に来ていました。

ダイレクトマーケティングのアプローチから代理店との提携へと変革するには、主要システムの全面的な見直しが必要であり、また統合に関する多くの課題に取り組む必要があります。そこで同社は、ポリシー管理や請求管理など、さまざまな業務をサポートするシステムの統合にAnypoint Platform™を選びました。

ソリューション

PacificCompの取り組みの最終目標は、保険引受人とその代理店両方のコストを削減し、使いやすさを高めることでした。これは、同社のテクニカルチームがアーキテクチャを構築するうえでの最重要事項でした。そこで、同社はサービスとしてのソフトウェア(SaaS)アプリケーションに可能な限り多く投資することになります。SaaSなら、市場の需要に応じてリソースの使用量を増減できるからです。しかし、同社は既存のシステムもいくつか保有していたため、クラウドかオンプレミスかに関わらず、既存のシステムと新しいシステムとを統合する必要がありました。

PacificCompは新しいシステムへの投資に際し、現在のニーズを満足させるだけでなく、同社の事業の成長にもテクノロジーの進化にも効果的に対応できるソフトウェアアーキテクチャモデルを意図的に採用することを決定しました。採用した主なシステムは、FirstBest(保険引受管理)、DCo(ポリシー管理)、Guidewire(保険金請求対応アプリケーション)、STG Billing(保険料請求管理)、SpringCM(文書・ワークフロー管理)でした。DCoなどは以前からの選択肢のひとつでしたが、それ以外は、STG Billingなど、新しいビジネスモデルの一環として採用されたものです。そして、すべてのコンポーネントはアーキテクチャの一部として統合されるべきものです。PacificCompのCIOであるJoe Cardenas氏は「当社の環境には、現行のシステムとまったく新しいシステムの両方が存在しています。システムの視点からいえば、私たちはまったく新しい会社に生まれ変わるようなものだったので、非常に最先端なことに挑戦するチャンスにもなりました。そこで私たちの取り組みの鍵になったのが、適切なアーキテクチャを見極めることです。」と述べています。

この統合モデルを実装するための立ち上げの一環として、PacificCompはErich Leipold氏(evolsolutions LLC)をアーキテクトとして契約し、設計を依頼しました。Leipold氏は次のように述べています。「私たちが最初にやるべきことは、統合プラットフォームの選定でした。ポイントツーポイントの統合はすでに一部実装されていましたが、それらは柔軟でスケーラブルな環境では管理が難しいとわかりました。そのため、私たちはエンタープライズサービスバス(ESB)の利用がPacificCompのニーズに適う適切なアーキテクチャだと判断しました。」

PacificCompは、アーキテクチャの視点ではかなり多くのSaaSアプリケーションを使用しました。「私たちは、ニーズを満たすベストなアーキテクチャは、2つのMuleインスタンス、つまりパブリックとプライベートのインスタンスが必要であると判断しました。これにより社内外両方のMuleユーザーに、最適なセキュリティモデルを提供できました。」とLeipold氏は述べています。

PacificCompはAnypoint Platformを活用し、同社の2010年の再始動に向けて、最もクリティカルで時間的に余裕のないユースケースの実装に着手します。なかでも同社が最初に手掛けたのは、同社のすべてのポリシーを管理するAS/400用のポリシー管理アプリケーション(DCo)と、MajescoMastekの請求アプリケーション(STG billing)との統合でした。

ポリシー管理と請求業務を統合できたことは、PacificCompにとって事業を再始動する最大の難関を突破したことになります。しかし、Anypoint Platformによって適切に解決できる課題はそれだけではありませんでした。たとえば、同社ではエンタープライズコンテンツ管理システムとしてSpringCMの採用を決定していたため、このシステムと、保険会社の日々のオペレーションで発生する文書処理のための多くの内部アプリケーションを統合する必要があり、Anypoint Platformがそのプラットフォームになりました。

損害保険業務は毎日数多くの書類を印刷し、さらに電話件数も相当数にのぼることから、PacificCompはいくつかの小規模なアプリケーションも開発しました。たとえば、最初のアプリケーションが、印刷書類を含むファイルグループを請求ワークフローの一環としてSTG billingよりPacificCompへ送信します。次のアプリケーションは、通話をデータベースへ記録します。さらに残りのアプリケーションが、必要に応じて、SQLデータベース、AS/400データベース、共有ファイルとの間でデータを移動させています。

主要システムを無事に統合できたため、PacificCompは2010年、保険代理店販売モデルによってその事業を再始動することができました。しかし同社の成功はそこで終わりではありません。これからも新しい統合が開発されるでしょうが、Anypoint Platformは引き続き企業全体で単一の統合フレームワークを提供し続けます。

「Anypoint Platformはとても重要な事業転換を可能にし、Pacific Compensation Insurance Companyは即座にその価値を得ることができました。それだけでなく、将来のニーズをも満たせる信頼性の高さと、すべての開発者にとっての習得の容易さも証明されています。私たちはAnypoint Platformを選択したことに、たいへん満足しています。」とLeipold氏は述べています。